年収300万円の位置づけ
年収300万円は社会人のスタートライン
厚生労働省の調査によると、大卒の初任給は21万200円になっています。 高専・短大卒は18万3,900円、高卒は16万7,400円です。大雑把に言うと新社会人の平均年収は300万円くらいになります。一部の上場企業では年収が400万円になることがあります。
一方、地場の中小企業などでは年収300万円に満たない企業もありますが、社会人のスタートラインはだいたい300万円がひとつの目安になります。この300万円で親から自立し、生活をしなければならない基準となるのです。
ところが最近は、社会人になっても正規雇用につかず、非正規雇用で働く若者が 増えています。また、40%近くが3年以内に学校卒業して就職した会社を離職するというデータがあります。これらの若者の中から非正規雇用で働く人たちが出てきています。
非正規雇用増加で低収入が増える
このように日本型終身雇用は崩れ、三十歳を過ぎても派遣社員や契約社員、またはフリーターなどの人たちが増える要因になっています。 この結果、中高年における年収300万円の労働者が一昔前に比べて増えている現状があります。
家庭の補助としてパートなどで働く主婦なら良いですが、自立して生活費を稼がなければならない独身者にはあまりにも低い収入と言わざるを得ません。低収入となれば、所得税がいくらかかるのか気になります。また、国民健康保険料の料金も心配になります。
病気や結婚、さらには老後の資金などいくら貯金があればいいかも気になるところです。低収入を放置しておけば後々大きな問題になり、年収300万円というのはいくつも配慮しなければならない課題が存在してるようです。
年収300万円の所得税はいくら?
所得税を計算の計算方法は?
所得税は、「課税所得額×所得税率-控除額=所得税額」、この方程式を用いて所得税の金額を割り出します。
その前に、課税所得額、所得税率、控除額をそれぞれ求めなければなりません。
まず課税所得額を求めます。
課税所得額は、「給与所得額-所得控除」から導き出すことができます。
給与所得額は、 「総収入額-給与所得控除」で求めます。
では、給与所得控除はどうでしょうか?
所得税を計算の計算方法は?
そして給与所得控除は次のように決まっています。年収によって基準が異なります。 その基準は以下の通りです。
●65万円 未満・・・65万円
●180万円以下・・・ 収入金額×40%
●360万円以下・・・収入金額×30%+18万円
●1000万円以下・・・ 収入金額×10%+120万円
これに数字を当てはめると、年収300万円の給与所得控除は108万円。
給与所得額は?
次に給与所得額(総収入額-給与所得控除)を求めます。
これに数字を当てはめると、300万円ー108万円= 192万円
続いて課税所得額(給与所得額-所得控除)を求めます。
これに数字を当てはめると、192万円-所得控除(社会保険料控除45万円+基礎控除38万円)=課税所得109万円
年収300万円の所得税は約5万5千円
課税所得109万円×所得税率5%=所得税額約5万5千円
年収300万円の所得税はおよそ55,000円になることかわかりました。この数字はあくまで目安です。控除金額などは世帯構造によっても変わってきます。既婚の有無や子供の人数、独身かどうかでも違いが出ます。
上記で示した例は、単身者モデルを採用しています。 年収300万円に対して5万円を超える所得税 。これが安いか高いかは評価の分かれるところです。ただ、日本は累進課税が採用されていますので、年収が上がれば上がるほど、所得税率も高くなってきます。
年収の高い人からの声としては、年収300万円で5万円余りの所得税は安すぎるとの見方がされます。一方、該当する年収300万円の人たちからは所得税をもっと下げて欲しいとの声が聞かれます。ここは大変難しいところですが、年収300万円ではざっくり言えば5万円ほどの所得税がかかることになるのです。
年収300万円では5万円ほどの所得税がかかることになります。
国民健康保険料は?
国民健康保険の概要
国民健康保険は 、自営業者や個人事業主 、またはフリーランスで働く人たちが加入する健康保険です。この国民健康保険の料金はそれぞれの自治体によって異なります。これは自治体ごとに運営されているために起こる現象です 。
国民健康保険料は、 医療、支援、介護の3分野を合計した金額を払います。医療分は、 健康保険の中核部分で、国民健康保険加入者の前年度の医療費などをもとに金額が決まります。
支援分は、75歳以上の人が対象となる後期高齢者医療制度の運営費用を、国民健康保険加入者が負担するものです。 介護分は、40歳から64歳までの介護保険被保険者による負担分です。
単身者の国民保険料はいくら?大阪市の例
単身者など家庭の属性によって納める国民保険料は違ってきますが、ここでは単身者のモデルを基礎に紹介していきます。そして年収300万円の単身者の具体例として、大阪市の国民健康保険料の平均金額の詳細をみていきましょう。
年齢区分で言うと世代によって違いがあることがわかると思います。40歳~64歳の世代で国民健康保険料が高くなっているのは、 介護分の料金が加わるためです。
例えば、39歳以下のケースでは、医療分として所得割、 均等割、平等割の料金の合計が 約18万円になります。これに支援分の所得割、 均等割、平等割の料金6万4千円が加わり、国民健康保険料の合計が24万円あまりなるのです。
そこに40歳~64歳の 世代では、介護分の 6万円が加わるため、この世代の保険料が少し高くなる傾向にあります。
国民健康保険加入者の高負担率
国民健康保険は自営業やフリーランスが入る保険です 。一方、会社員は企業などでつくる健康保険に加入しています 。会社員も退職などすれば 、国民健康保険に切り替えなければなりません。ただ会社員在職中は健康保険に加入し、そこで保険料は会社側と社員が半分ずつ負担することになっています。
国民健康保険の加入者は全額を被保険者が負担しなければなりません。このため同じ年収300万円であっても、被保険者の負担率は国民健康保険の加入者の方がどうしても多くなってしまいます。
さらに会社員は終身雇用のもと、自動的に年収が増えていきます。フリーランスなどは歩合制なので収入が増えるかどうかは不透明です。年齢が上がっても年収が下がる可能性さえあるのです。
このようなことを総合的に考えると、国民健康保険の加入者の実質負担率はかなり高くなると言うことができます。仮に年収が300万円のまま続いていけば、国民健康保険の負担率は相当なものになってしまいます。
非正規社員から会社員への転職が成功するか、もしくはフリーランスなどでも年収を上げるようにするなどの措置が取られないと、大変なことになるのは明白のようです。
年収300万円で貯金額はいくら?
2018年度の日本人の平均貯金額(二人以上の世帯)は1752万円になっています。このデータによると二人以上の世帯での平均金額ですから、単身世帯の貯金額ははっきりとは分かりません。また年収300万円の貯金額についても不明です。
しかし、 世代別の平均貯金額というものさしが公表されています。それによると、29歳以下の平均貯金額は150万円あまりになっています。正社員での平均年収は、22,3歳でと300万円くらいと考えられますので、年収300万円レベルの会社員なら、平均貯金額は150万円以下と見るのが無難なような気がします。
ただ 、これが非正規雇用労働者となると、会社員よりもさらに貯金額は少なくなると思われます。 平均値ですからかなりムラがあるため、一概にどうこういうことはできませんが、非正規労働者でも単身世帯よりも、むしろ実家暮らしの方が貯金しやすい環境にあるのかもしれません。
実家暮らしなら、基本的にお金がかかりませんから、非正規労働者でも収入をそのまま貯金に回すことができます。 そう考えれば年収100万円の非正規労働者でも、コツコツ貯金する人はそれなりの貯金額になってる可能性はあります。
ただ、平均貯金額でいえば、 正規労働者、非正規労働者に限らず、 100万円前後の貯金額ではないかと推測されます。年収300万円の貯金額というのは、100万円が一つの分岐点になるのではないでしょうか。
年収300万円のお金に関するまとめ
収入が低い割に、税金による負担がいっそう重く感じます。 将来のことを考えれば非正規労働者は、会社員への転職をすぐに考えるべきです。
年収300万円でも、正規労働者と非正規労働者が違うように、 単身者と実家暮らしではまたそのお金の価値が変わってきます。年収300万円をかりに10年続けて、実家で暮らしで、質素な生活をすれば貯金額は1000万円でも不可能ではないと思います。
しかし将来、受け取る年金額や総所得を考えれば、やはりとても厳しい現実があります。 年収300万円いうのは、働く雇用体系によって、全く内容が異なるということを認識していた方が良さそうです。