トレーダーであれば、『窓開け』や『窓埋め』という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
相場において『 窓 』は重要な用語であり、利益を上げられるタイミングとして注目されます。
ローソク足の窓とは?
ローソク足のチャートにおける『窓』とは、 2つのローソク足の間に大きな空間ができている状態 です。
通常、市場が安定している状態では窓ができることはあまりありません。
あるローソク足の終値と次のローソク足の始値の間に大きな差はないので、窓はできません。しかし何らかの要因によって、価格が大きく変動すると、窓ができます。
極端な例ですが、108円前後で推移していたドルが、何らかの要因で1時間後に120円まで急上昇したとします。トレーダーが1時間足のローソク足を使用しているとすれば、108円前後の終値から、次のローソク足の120円の始値まで大きな空間ができるでしょう。これが窓なのです。
同様に株式投資でも、特定の銘柄の価格が急に上昇・下降した場合にはローソク足の間に大きな空間ができます。
窓が開いている状態を『 窓開け 』といい、トレーダーにとっては利益を上げるチャンスとなります。
FXや株式投資では『窓開け』に対して、『 窓閉め(窓埋め) 』という現象もあります。
窓閉めもトレーダーにとってとても重要な現象です。というのも、FXや株式投資では『開いた窓は必ず閉まる(埋まる)』という理論があるからです。価格の急上昇や急降下が発生した元の状態まで価格は戻ると考えられています。
たとえばドルが対円で108円から120円に急上昇した場合、いずれは108円前後まで価格は戻るだろうと考えられるのです。
株式投資でもある銘柄の価格が急激に上昇すれば、利益を確定したいトレーダーや急激な価格上昇に危機感を持つ投資家などが売りに動く可能性が高くなります。結果として価格は下落に転じ、窓が開いたときの価格付近に落ち着くことになるのです。
ローソクの窓が発生する要因は?
ローソク足のチャートで窓が発生する要因はいくつかあります。たとえば、
- 国ごとのFXの営業時間の違い
- 大きなニュースや要人の発言
- 経済指標発表
などが挙げられます。ではこれらを一つずつ詳しく見て行きましょう。
国ごとのFXの営業時間の違い
FXは24時間いつでも取引が行えるため、株式に比べて窓開けが発生する確率は低くなります。しかしFXで窓開けが発生した場合、国ごとの営業時間の違いが大きな影響を与えていると言われています。
とくに世界のほとんどの国が休日にしている土日を平日扱いにしている、中東のバーレーン市場の影響によって窓が開くことがあります。バーレーンはイスラム国家であるため、金曜日が休日に設定されています。
一方で土日は取引が行われるので、日本のトレーダーが月曜日にチャートを見ると大きな窓が開いていることがあるのです。
大きなニュースや要人の発言
土日に 世界的なニュースや各国首脳の発言 などが取り上げられると、窓開けが発生する場合があります。世界情勢を揺るがすような出来事が発生すると、それに乗じて利益を上げようとするトレーダーが取引を行うため、価格が大きく変動します。
場合によっては取引時間中に窓が開くこともあります。大きな窓が開くことはそれほど多くありませんが、イギリスがEUを離脱する可能性が報じられた直後にはポンドドルで大きな窓が開きました。
さらにギリシャの債務に関する国民投票が行われた2015年にはユーロ円で、北朝鮮の動向が注目されていた2017年にはドル円で窓が開いたことがあります。
さらにアメリカ合衆国大統領の発言や他の要人の発言によって窓が開く可能性もあります。一方株式投資では、ある企業の商品の需要が今後高まると予想される場合や、不祥事が明るみに出た場合に価格が乱高下し窓が開くかもしれません。
経済指標発表
世界に影響を与える 経済指標 が発表されるときも、窓が開く可能性があります。とくに発表された経済指標が当初の予想よりもよかったり、悪かったりした場合に、市場に大きな影響があります。
たとえば各国のGDP、米国や日本の雇用統計などの指標の良し悪しによって、トレーダーが取引を行い、結果として窓が開くかもしれません。
窓を開けた場合予想されるパターン
窓が開いたということは、何か大きな出来事があったことを示唆しています。
窓が開いた理由がどんなものであれ、トレーダーとしては取引のチャンスです。窓が開くと、一般的に市場はその窓を閉める方向で動くとされているからです。
主に考えられるパターンは、
- 窓埋めを狙う逆張り
- トレンドについていく順張り
- リスクを最小限に抑える両建て
の3つです。では一つずつ詳しく見ていきましょう。
窓埋めを狙う逆張り
もっとも分かりやすいのは、 窓埋めを狙って逆張り をする方法です。窓が開いたということは、開いた方向に相場が大きく動いている状態です。
たとえば上窓が開いていれば、価格が大きく上昇している状態でしょう。トレーダーの心理としては、相場が行き過ぎていると感じるので、まだ利益が出ているうちに利益確定の売りポジションを取る可能性があります。
多くのトレーダーが利益確定の取引を行うと価格が下落し、窓を埋めていきます。この窓埋めが起こることを予想して、窓が開いた時に逆張りするのが1つのパターンです。
ただしこの方法には注意点があります。
◆さらに窓埋めが確実に起こるとは限りません。もし窓埋めが起こらなかった場合には、逆張りによって損失が大きくなってしまう事もあるでしょう。
たとえばある企業が不祥事によってその銘柄の価格が大きく下がった場合、企業イメージが回復しなければ株価は戻りません。そのまま倒産してしまう恐れさえあるでしょう。そのため窓埋めが起こるかどうかをしっかり見極めることが重要となります。
窓埋めが起こるかどうかは、テクニカル指標やチャート分析をしっかり行うことが重要です。さらに経済ニュースに注意を払うことでその後の株価の動きを予測できます。
トレンドについていく順張り
窓開け後の別のパターンは、 トレンドについていく順張り です。窓が埋まらないケースを想定して、トレンドについていく取引となります。
たとえば上窓が開いて、価格がいきなり上昇したとします。窓は埋まることが多いので、逆張りをしたいところですが、何らかの理由で窓が埋まらず、価格の上昇が続くと予想できる場合には順張りで利益を上げられるでしょう。
とくに窓が開いた理由が、何らかの世界的なニュースの場合には窓が埋まらないことも多々あります。
窓が開いた理由がはっきりわかっている場合、さらにその後どうなっていくかという予想もされている場合には、順張りで取引した方が利益を上げられる可能性が高いでしょう。
もちろんこの場合も他のテクニカル指標などを分析しながら慎重に取引する必要があります。あまり長期間ポジションを保有し続けるのは避け、損失が出ている場合にはあまり粘らずに損切りするのが賢い方法です。
リスクを最小限に抑える両建て
もし窓が発生することが予測できているのであれば、リスクを最小限に抑えるため 両建てトレード するのがよいかもしれません。FXの場合、両建てとは同じ通貨ペアの買いポジションと売りポジションを両方保有しておくことです。
窓が開くと、必ずどちらかのポジションでは利益が出るはずです。その時点で利益が出ているポジションを決済し利益を確定します。
一方で、含み損が出ているポジションはそのままにしておきます。もしその後窓埋めが起これば、含み損は少なくなっていくので、許容できる含み損になった時点で決済すれば利益を得られるでしょう。
窓が発生することは分かっても、上窓・下窓のどちらが発生するかを予測するのは難しいので、両建てでリスクを最小限に抑える方法が有効です。
ただし、FX会社によってはトレーダーの両建てを禁止しているところもあるので、事前に両建てができるのかをしっかり確認しましょう。
まとめ
ローソク足の窓開けと窓埋めは、何らかの理由でローソク足の間に大きな空間ができる現象です。この現象を上手に利用すれば、取引で大きな利益を上げられる可能性があります。
ただし窓埋めが必ず起こるとは限らないのでテクニカル指標やインジケーターを使って、慎重に相場を分析するようにしましょう。確かな根拠をもって取引することで大きな損失を被るのを避けられるでしょう。