FXトレードのテクニカル分析手法の1つである一目均衡表とは、波動・時間・値幅水準を取り入れることによって相場の環境認識を複合的に行うテクニカル指標です。
まず初めに、雲についての解説をする前に一目均衡表の概要と仕組みについておさらいしていきましょう。
一目均衡表は5本のラインによって構成されています。
- 転換線 : 過去9日間の最高値と最安値の半値を繋げたライン
- 基準線 : 過去26日間の最高値と最安値の半値を繋げたライン
- 遅行スパン : 終値を26日分だけ過去に移動させライン
- 先行スパン1 : 当日の転換線と基準線の真ん中の値を26日だけ前に移動させたライン
- 先行スパン2 : ローソク足の過去52日分の高値と安値の中間の値を26日だけ前に移動させたライン
細田悟一という日本人が作ったテクニカル分析手法であり、元々は日足で利用する目的で開発され、その名の通り「一目で相場の売り買いの均衡状態が分かる指標」になっています。
都新聞社という日経と並ぶ程のマーケットに精通した新聞社で商況部長を勤めていた細田悟一氏ですが、一目山人というペンネームを使い投資家として株式のコラムを新聞に載せるなどの活動も行っていたそうです。
価格に注目して設計されたテクニカル指標が多くある中、一目均衡表は 時間軸 による分析も行うことが出来る特徴的な設計となっているため、数あるインジケーターの中でも未来の値動きを考察しやすいものとなっています。
一目均衡表を完全に使いこなすトレーダーは現在ほとんどいないと言われています。
その理由の一つが、考案者が出版した全7巻の解説本も現在では一部入手困難となってしまっているためです。ですが、必ずしも使い方の全てを理解していなくても十分に優位性の高い取引は可能ですので、安心して学習していきましょう。
一目均衡表の雲は何を表している?
先ほど紹介した5本の線のうち最も特徴的なものが、先行スパン1と先行スパン2という未来予測を示すための2つの線です。そしてこの2本に挟まれた帯状の範囲が「 雲 」と呼ばれる部分になります。
先行スパンとは現在の価格水準をチャートの未来に予め表示させたものですので、言い換えると「その価格水準で多くの取引が行われた事実」を未来に表示させたものとなります。
では実際に雲を分析することでチャートからどの様な情報を読み解くことができるのかというと、それは以下の3つになります。
- 現在のトレンドの目線(買い優勢か、売り優勢か)
- チャートの支持・抵抗ポイント
- 今後のトレンドの転換点
また、トレンドが今後どのくらいの上げ幅や下げ幅を作っていくのかという値動きの水準を計るためにも役立ちますので、そこにローソク足との位置関係を併せることで相場の展開がさらに読みやすくなります。
雲の傾きはトレンドの目線を示す
相場の状況は大きく分けると上昇トレンド、下降トレンド、レンジ相場の3つのパターンに分けることができます。
このうち一目均衡表では上昇トレンドか下降トレンドでエントリーポイントを狙っていく訳ですが、雲の傾きが上向きであれば上昇トレンド、下向きであれば下降トレンドと判断します。
雲の厚さは抵抗の強さを示す
移動平均線のような1本の線から1次元的に相場の強弱を伝えるものとは違い、雲は2本の線の間の面積から2次元的に相場内の支持・抵抗帯の強弱を伝えています。
上昇トレンド中では下降抵抗帯、下降トレンド中では上昇抵抗帯の役割を果たし、その強弱については 雲の厚さ によって計ることができます。
雲が厚ければそれだけ支持・抵抗としては強く信頼性が高いということになり、反対に薄ければその信頼性は低くなります。
雲のねじれがトレンド転換点を示す
上昇雲から下降雲に切り替わる瞬間(逆も同じ)のねじれたように見えるところを「 雲のねじれ 」と呼び、ここが未来においてトレンド転換が起きる可能性のある地点だといわれています。
雲が表す売買のサイン
雲の観察から読み取れる売買のサインは以下の2つです。この2つのサインを見逃さずにしっかりと環境認識を行うことができれば、優位性の高いエントリーポイントを見つけ出すせるようになります。
- 雲の反発による押し目買い戻り売りサイン
- 雲抜けによるトレンド転換サイン
ただし、このサインが出たからといって闇雲にエントリーを重ねてもなかなか勝てるようにはなりません。
雲の反発による押し目買い戻り売りサイン
ローソク足が雲の上<にあれば買い勢力優位の 強気相場 、逆にローソク足が雲の下にあれば売り勢力優位の 弱気相場 を表しています。
強気相場では押し目買いを、弱気相場では戻り売りを狙ったトレンドフォロー戦略が定石ですので、上昇トレンド中に雲にサポートされる所や下降トレンド中に雲にレジストされる所が売買のサインとなります。
雲抜けによるトレンド転換サイン
前日のローソク足が雲を明確に上抜け(又は下抜け)した時が、トレンドの切り替わりを示すので売買サインとなります。
当然ですが上抜けすれば上昇転換、下抜けすれば下降転換です。
雲が薄いほどこのサインは出やすくなりますが、厚い雲を抜けた時の方がレジサポ転換がおきやすいと言えるので信頼性が高いサインとなります。
応用として、この上記2パターンに加えて 転換線・基準線の売買シグナル を同時に利用することで、更に安定した取引チャンスを見つけることもできます。
ちなみに、転換線が基準線を上抜くと目線が上に切り替わるので買いのサイン、逆に下抜くと目線は下に切り替わり売りのサインです。
雲の内部はもみ合い相場のサイン
雲=抵抗帯 ということは言い換えると、雲の付近では多くのトレーダーの決済注文や新規エントリーが集中することになります。つまり、雲の内部はもみ合い相場になりやすいのでレンジを形成しやすいです。
一目均衡表(雲)の計算方法
一目均衡表は、先の説明の通り5つのラインで構成されます。
それぞれのラインは独自の計算式に基づいてチャート上に示されており、以下がその計算式になります。
- 転換線 = (過去9日間の最高の値+過去9日間の最安の値) ÷ 2
- 基準線 =(過去26日間の最高値+過去26日間の最安値) ÷ 2
- 先行スパン1 =(転換線+基準線)÷ 2
- 先行スパン2 =(過去52日間の最高値+過去52日間の最安値) ÷ 2
- 遅行スパン = 当日の終値を26日分だけ過去に移動させる
ここで注意していただきたいのが「当日を含めた計算式になっている」ということです。
この計算式は、作者である一目山人氏が2000人の調査員を動員し膨大なデータを集めて7年もの歳月をかけて検証・構築されたものです。
ですのでこの計算式は既に完成しておりトレーダー側で変更していく必要が全く無く、使用するにあたって計算式の意味や成り立ちを覚える必要はありません。
ちなみに計算式を見てわかる通り、基本的には 日足 で使うためのインジケーターです。ですが、同じ設定のまま短期足で使用しても一定の機能が確認できるようなので、実際に短期足で使用して結果を出しているトレーダーも存在します。
FXのチャート上での雲の見方や注意点
雲を利用したトレードは有利なポイントを掴みやすい反面、盲目的に使用すると負けパターンに陥ることも多いので、しっかりと勝率の高いエントリーポイントに絞って売買をしていくように心がけましょう。
では実際に陥りやすい負けパターンを2つご紹介しましょう。
ダマシに合いやすい
厚い雲による反発エントリーを考えた場合、必ずしも反発後に大きくレートが伸びていくとは限りません。
小さな反発や小さな雲抜けで終わってしまう場合もありますので、自身の許容範囲内で損切りはしっかりと設定しておきましょう。
高値・安値掴みになりやすい
ローソク足の雲抜けエントリーの際に最も起こりやすい損切事故が、 高値・安値掴み です。
前述のとおり厚い雲を抜けた時ほどエントリーサインの信頼性は高いのですが、そのまま素直にレートが伸びていく場合もあれば、一旦戻されてから大きく伸びる場合や戻されたまま逆行してしまうパターンも十分にあります。
MT4で一目均衡表の雲を設定する方法
FX業者が提供するどの MT4 にもインジケーターとして一目均衡表が装備されています。
また冒頭で記述した5本の線についてもデフォルトで正しい数値が設定されている為、特別こちらで数値をいじる必要はありません。なお、雲もきちんと表示されるように予め設定された状態で入っています。
表示のさせ方は以下になります。
まずどれでも好きな通貨ペアのチャートを表示させ、MT4の上部メニューの中から「挿入→インディケーター→トレンド→Ichimoku Kinko Hyo」の順に選んでください。
一目均衡表の設定画面が表示されるので、そのままOKを押すとチャートに表示されます。
MT4で一目均衡表の設定値や色を変更する方法
一目均衡表も他のインジケーター同様、線の色や太さ、形状などのカスタマイズが可能です。
お使いのプラットフォームによっては、デフォルトのままだとどれがどのラインなのか判別しにくいかったり雲の上昇下降も分かりにくいこともありますので、ご自身の使いやすい色や形に設定しておくと便利です。
設定画面の開き方は、MT4のチャート上で「右クリック→表示中のインディケータ→一目均衡表を選択→編集」と進んでください。
そうすると、先ほども見た設定画像が表示されますので、「色の設定」タブを開いてください。
左の列で色の変更を、真ん中の列で線の形状を、右の列で線の太さをそれぞれ変更できます。
特別決まった設定はありませんので、ご自身で一番見やすいと思う設定方法を探して頂ければ良いと思います。
まとめ
一目均衡表は膨大な時間とデータを費やして作成された精度の高いインジケーターであり、そこから読み取れる売買サインも信頼性が高いと言えます。
ですが相場がこの後上がるか下がるかの確率は1/2であるとも言えるため、闇雲に使用したりせず、マルチタイムフレーム分析を心がけ勝率の高い売買サインのみを拾っていけるようにしましょう。
このように 雲の分析方法 を理解して上手に使いこなすことができるようになれば、今よりも多く有利なエントリーポイントを見つけられるようになりトレードの幅は広がっていきますので、ここで学んだことをしっかりとチャート上で復習していきましょう。