世の中にはテクニカル分析と呼ばれるものが数多くあります。それぞれチャートの動きや株価を用いて市場の動きや取引のタイミングを予測するものです。
ただし理論や考え方が共通するものも多いため、それぞれの分析について詳しく知っておくと、FX取引に役立ちます。では 一目均衡表 を使った分析方法について解説します。
株価の変動はもちろん、時間や日数といった要素を含めてテクニカル分析しているところが大きな特徴です。FX初心者の方でも比較的理解しやすいため、高い人気を誇ります。
それでは、一目均衡表を使ったFXのトレード方法を5つご紹介しましょう。
一目均衡表とMACDの組み合わせ
まずは一目均衡表と MACD という分析法を組み合わせたトレードについて見ていきましょう。
MACDとは、短期と長期の移動平均線を用いた分析方法です。
株価が上昇するとき、最初に短期の移動平均線が素早い反応を示し、その後長期の移動平均線が動いていきます。その2本の移動平均線の動きの差を利用して分析するのがMACDです。
さらにMACDの単純移動平均をシグナルと呼び、MACDとシグナルという2つの線の交差や2つの線の方向転換などを利用して売りや買いのタイミングを図ります。
したがって、MACDは細かなトレンドをつかむのに便利なテクニカル分析といえるでしょう。
エントリーのタイミング を決めるためにはMACDを利用すると良いといえます。
一方でMACDは買いや売りのトレンドが大きいのか、長期間続くのかといった分析には向いていません。
その点で役立つのが一目均衡表です。一目均衡表は買いや売りのトレンドの強さやどの程度長期にわたって続いていくかを予測するのに長けています。
特に三役好転・三役逆転が発生している場合には、かなりの確率で利益を上げられる状態になっているといえるでしょう。
しかし一目均衡表では、三役好転・三役逆転の発生を示す3つの条件が揃うまで待っていると、トレンドが終了してしまうこともあります。そのためエントリーするタイミングを見極めることが必要となりますが、そこで役立つのが MACD なのです。
つまり一目均衡表とMACDを組み合わせることで、相互に補完しながらトレンドの発生ポイント、トレンドが続く期間、エントリーポイントを見極めることが可能となるのです。
たとえば、以下のようなチャートがあったとします。
上が一目均衡表、下がMACDを表示したチャートです。
一目均衡表において最初の丸で株価が緑の遅行線の下を維持し、次の丸の部分ではオレンジの転換線が黄色の基準線を下から上に突き抜けています。
三つ目の丸の部分で株価が雲を下から上へ突き抜けて 三役好転 が発生した状態です。この3つの条件が揃った状態であれば買いのシグナルであるとすぐに理解できますが、エントリーは遅くなります。
一方で下のMACDでは、赤い丸の部分ですでに移動平均線のクロスが発生しているので、一目均衡表と組み合わせるとここが買いのエントリーポイントであると判断できるのです。
一目均衡表とボリンジャーバンドを使った手法
続いて利用できるのが、一目均衡表と ボリンジャーバンド を組み合わせた分析法です。
ボリンジャーバンドとは、価格変動の大きさを帯のようにチャートに記入したものです。ポリンジャーバンドが表すものは、『一定期間内の価格の変動範囲が広かったか狭かったか』ということです。
一目均衡表もそうですが、一般的に株価の変動を調べるためには高値と安値の中間値を使います。
しかし中間値だけに着目すると価格の変動幅は無視してしまうことになります。非常に狭い範囲で株価が動いたのか、それとも乱高下したうえで中間値付近に落ち着いたのかもトレーダーとしては知っておきたいところでしょう。そのようなケースでボリンジャーバンドは非常に役立つのです。
では実際にどのように一目均衡表とボリンジャーバンドを組み合わせられるのでしょうか。
移動平均線の上下の線は、一定期間の約68%の終値が入るバンドで 1σ (シグマ)、1σのさらに外側には終値の約95%が入る 2σ のバンドがあります。通常のチャートでは、終値はほとんどの場合2σのバンドの中で変動しています。
価格の変動があまりないので、一目均衡表においてローソク足は雲の中でもみ合っている状態です。
しかしある時終値が2σのバンドよりも外側に出たとします。これはボリンジャーバンドが得意とする『買われすぎ』や『売られすぎ』を表しています。
すると買われすぎの場合には価格の下落、売られすぎの場合には価格の上昇がその後トレンドとして現れると予測できます。
したがって買われすぎのサインが出たら『売り』、売られすぎのサインでは『買い』と 逆張り をすることで利益を上げられる可能性があるのです。
トレンドの把握に一目均衡表を、トレンドが始まるタイミングをボリンジャーバンドで見極めることになります。では実際にどのように一目均衡表とボリンジャーバンドを使ってトレードすればよいのでしょうか。
まず赤い丸の部分では現在の株価が雲を抵抗体としているものの、薄い青の線であらわされる2σの線をブレイクしています。この場合売られすぎとなっている可能性があるため逆張りで買いポジションを取るという選択肢が出てくるでしょう。
結果的にその直後から上昇トレンドが発生していることも分かります。
さらに青い丸の部分では株価が雲の中でもみ合っている中で薄いピンクの2σの線をブレイクしています。この場合、買いすぎであると考えられるので売りポジションを取るタイミングかもしれません。
FX取引では順張りの方が低リスクで利益を上げられるといわれますが、このケースでは 逆張り で取引を成功させることができる可能性があるのです。
一目均衡表とRSIを使った手法
一目均衡表を組み合わせた3つ目のFXトレード手法は、 RSI を使った方法です。
RSIは値幅に注目した分析方法で、買われすぎや売られすぎをとらえて逆張りするのに有効です。RSIはn日間の値上がり幅÷(n日間の値上がり幅+値下がり幅)で算出されます。
強い上昇トレンドや下降トレンドが発生している場合にはRSIが0か100に近い値になってしまい正確性にかけますが、それ以外のトレンドの転換点を見つけるのには役立ちます。
たとえばRSIが70%から80%以上になった場合には値上がり幅が大きく、買われすぎになっていると考えられます。そこでは逆張りが有効なので売りポジションを取ることになるでしょう。
一方RSIが20%から30%を切った場合には売られすぎであると考えられます。買いポジションを取ると、その後の値上がりで利益を上げられる可能性が高いといえるでしょう。
一目均衡表とRSIを組み合わせると、決済を行うイグジットタイミングを見極めることができます。特に三役好転・三役逆転が発生している時に役立ちます。
三役好転・三役逆転が発生した場合、強いトレンドが発生しているため、大きな利益を上げられる可能性があります。しかし三役好転・三役逆転が終わり、トレンドが変わるタイミングを誤ると、せっかく決済しても利益は少なくなってしまうかもしれません。
できるだけトレンドが変わる直前で決済したいところです。そこで役立つのがRSIなのです。
では具体的な例を見ていきましょう。
このチャートでは最初に赤い転換線が青の基準線を上から下に割り込み、ローソク足が緑の遅行線の上を維持し、株価が雲の下に推移しているという典型的な三役逆転の現象が起こっています。
つまり 強い売りのサイン です。株価は下がっていき売りポジションを持っていれば利益を上げられる状態が続いています。
しかしオレンジの丸の部分で下降トレンドが終わり、株価は上昇に転じました。しかし転換線が基準線を下から上に突き抜けたのはピンクの四角の部分なので、確実に下降トレンドが終わったと確信するまでにはここまで待つ必要があります。
するとかなりの利幅をロスしてしまっていることがわかるでしょう。ここで役立つのが下にあるRSIです。
一目均衡表ではまだ下降トレンドが続いている状態でも、RSIでは傾きが上昇に転じていることがわかります。つまりトレンドの終わりが近く、イグジットのタイミングであると読み取れるのです。
一目均衡表とRCIを使った手法
4つ目の方法は、一目均衡表と RCI を使ったものです。
RCIはRSIと同様に買われすぎや売られすぎを見極めて取引のタイミングを図るテクニカル分析です。
RCIは価格や日付に順位をつけ、その値が100に近ければ上昇トレンド、マイナス100に近づけば下降トレンドと判断します。
たとえば月曜日から水曜日まで3日連続で価格の上昇が続いたとします。木曜日に月曜日から水曜日までの株価の推移を対象に分析を行うとすると、前日の水曜日の株価が最も高く1位、火曜日が2位、月曜日が3位となります。
この場合RCIは100で天井圏となります。一方で月曜日から水曜日まで株価が下がり続けている場合、RCIはマイナス100となり底値圏と呼ばれます。
ここまで極端な値動きをすることはほとんどありませんが、RCIがマイナス80以下からマイナス80以上になった場合には株価が上昇に転じていると考えられるので買いのサイン、逆に80以上だったRCIが80を割り込むと下落への転換のタイミングと考えられます。
もちろん5日や13日、22日といったより短い期間で分析することも可能です。移動平均線におけるゴールデンクロスやデッドクロスと同様、短期線・中期線・長期線の転換や交差を使ってポジションを変更するタイミングを図ることも可能です。
では一目均衡表とRCIを使ってどのようにFX取引を成功させることができるでしょうか。
それはトレンドが発生していないときに逆張りをするという方法です。
一目均衡表は強いトレンドを見つけて取引のタイミングを図るのに適していますが、RCIを併用すればトレンドが発生していなくても利益を上げられる可能性を高められます。
株価が一目均衡表の雲の中でもみ合っている場合、上昇トレンドも下降トレンドも発生していないレンジ相場であると考えられます。このケースでは、株価は雲の中でしばらく上下を繰り返していきます。
そこで雲を突き抜けようとして跳ね返されたタイミングで 逆張り することで利益を上げられる可能性があります。一目均衡表だけでは売りか買いかの判断は難しいですが、RCIと組み合わせることでより確信をもってエントリーできるでしょう。
では実際のチャートを見てみましょう。
ピンクの四角の部分まで株価は上昇していますが、雲の上端に阻まれてしまいました。つまり上昇トレンドは発生せず雲の中でレンジ相場が続くと予想できます。
赤い丸の部分で緑のRCI(9)が赤のRCI(26)を上から下に抜けるデッドクロスが発生しているため、ここが 売りのタイミング となります。
しかもこのデッドクロスはRCIが50%から100%の部分で発生しているため、その確実性はさらに高くなります。実際その後株価は雲の中とはいえ下降していきました。
一方で緑の丸の部分でも同様に、RCI(9)がRCI(26)を上から下に突き抜けています。RCIで見るとデッドクロスですが、一目均衡表では株価が雲の上に抜けて維持されているため、エントリーのタイミングではないと判断できます。
一目均衡表とストキャスティクスを使った手法
一目均衡表と ストキャスティクス を使ったトレード手法について最後に見ていきましょう。
ストキャスティクスも『買われすぎ』や『売られすぎ』を判断するための指標の一つです。
『%K』、『%D』、『Slow%D』という3つの線を用いて、買われすぎゾーンや売られすぎゾーンに入っているかどうかで取引のタイミングを図ります。
『%K』は感度がよすぎて激しく上下してしまうため、一般的に用いられるのは『%D』、『Slow%D』の2本の線です。
特にストキャスティクスが効果を発揮するのが レンジ相場 です。逆に上昇トレンドや下降トレンドがはっきりしていると、ストキャスティクスでは明確な売りや買いのサインが出にくくなります。
一目均衡表で株価が雲の上や下にある場合、転換線と基準線、遅行線などとの兼ね合いによってトレンドが発生していると判断できるかもしれません。
一方で株価が雲の中に入っている場合、明確なトレンドは発生しておらずレンジ相場になっていることが多くなります。このようなケースでは株価が雲を上や下に突き抜けるまで、雲の中でもみ合うことが少なくありません。
ここで売りや買いのタイミングを図るために利用できるのがストキャスティクスです。
『%D』や『Slow%D』を使って、2本の線がクロスしている場所を探します。特にストキャスティクスが80%以上になっている『買われすぎ』や20%以下になっている『売られすぎ』の部分で2本の線がクロスしている場合は取引のタイミングです。
雲を抵抗帯として利用すれば、株価が下がっている時に 逆張り で利益を上げられる可能性が高くなります。一目均衡表では分からなかった取引のタイミングや決済のタイミングを見極められるのがストキャスティクスなのです。
一目均衡表の赤い丸のところでは、株価が雲の中に入り、下落して雲に接触しています。このまま雲を突き抜けて下降トレンドに入る可能性もありますが、雲が抵抗帯となって下げ止まると考えることもできます。
そこで今度は下のストキャスティクスに注目します。すると赤い丸の部分で、青の線で表される『%D』が赤の『Slow%D』を下から上にクロスしていることがわかります。つまりここが買いのエントリーのタイミングであると判断できるわけです。
一方で青い丸の部分からわかるように、はっきりとした上昇トレンドや下降トレンドが表れている場合にはストキャスティクスでエントリーのタイミングを見極めるのは難しくなります。
まとめ
一目均衡表と組み合わせることができる分析方法はいくつかありますが、共通の考え方に基づいている方法も多いことに気づくことでしょう。
いくつかの考え方を理解しておけば、複数の方法を応用して買いや売りのポジションやエントリーのタイミングを予測することができます。
ぜひ複数の方法に通じておき、さまざまな相場の動きに臨機応変に対応できるようにしたいものです。