株式投資を行う上で、トレーダーはさまざまなテクニカル指標を使って市場の分析を行わなければなりません。
多くのトレーダーから支持を集めているインジケーターの一つが『 RCI 』です。
RCIとはどんなインジケーター?
RCIは『Rank Correlation Index(順位相関指数)』の略で、株式投資においてよく用いられるテクニカル指標の一つです。
テクニカル指標にはトレンド系とオシレーター系の2種類がありますが、RCIはオシレーター系のインジケーターとなります。
-(マイナス)100%から+100%の間で表され、買われすぎ・売られすぎを判断する一つの材料として利用されることの多いテクニカル指標です。
RCIは日本語で順位相関指数と呼ばれますが、重要となるのは『順位』という言葉です。RCIは株やFXで用いられる他のインジケーターと大きく異なる特徴があります。それが『順位に注目する』という点です。
これら2つの順位の間にどのくらいの相関関係があるかを調べて、その後の市場の動きの予測に役立てるのがRCIの考え方なのです。
まず価格の順位とは、対象期間中の終値を高い順に1位、2位、3位と順番を付けたものとなります。
例えば月曜日から水曜日まである株式が16,000円、17,000円、18,000円と上がり続けたとします。すると価格の順位は1位が水曜日、2位が火曜日、3位が月曜日となるでしょう。
一方日付の順位とは、終値にかかわりなく 取引日に近い順 に高い順位が付けられます。
取引日が木曜日であれば、日付の順位は1位が水曜日、2位が火曜日、3位が月曜日です。このケースでは価格の順位と日付の順位に強い相関関係があるので、RCIは+100に近い値になります。
RCIの計算方法と判断基準
ではRCIの計算方法について見ていきましょう。RCIの計算式は次のようなものです。
この式の『d』とは日付の順位と価格の順位の差を2乗したもので、『n』はRCIを計算するために設定する期間を指します。
前述の月曜日から水曜日までの終値では、価格も日付も、水曜日が1位、火曜日が2位、月曜日が3位という結果でした。したがって日付と順位の差であるdは0、nは3となります。
これを式に代入するとRCIは+100%という結果になり、 強い上昇トレンドが発生 していると判断できます。
他のオシレーター系のインジケーターと同様に、+100%に近づけば近づくほど強い上昇トレンドが発生していると考えられ、逆に-100%に近づけば強い下降トレンドが発生していると予測できるのです。
一方RCIが0に近い値であれば、トレンド相場ではなくレンジ相場にあると考えられるでしょう。
RCIは比較的簡単に計算することができますが、どのように『売り』や『買い』を判断できるのでしょうか。
基本的な判断基準は、他のオシレーター系のインジケーターと同様に一定基準を超えた場合の逆張りです。
RCIの場合には、+80%を超えたら買われすぎ、-80%を下回ったら売られすぎと判断できます。
RCIは逆張りに役立てることができるので、+80を超えたら価格の上昇が終わると考えて売り、-80%を下回ったら価格の下落が止まって上昇に転じると考えて買いというエントリーになるでしょう。
またトレーダーによっては、一度株価が+80%を超えて、価格が下落に転じた後再度+80%のラインに触れた時にエントリーするようにしています。
いずれにしてもエントリーのタイミングが異なるだけで、買われすぎ・売られすぎを見て逆張りする方法に変わりはありません。
RCIとRSIの違いは?
RCIとよく似た名称のインジケーターに『 RSI 』があります。似た名称のオシレーター系のインジケーターではあるものの、この2つはまったく別のテクニカル指標です。
まず大きく異なるのが、買われすぎ・売られすぎを判断する基準です。RCIは+80%や-80%を判断基準としていますが、RSIは70%を買われすぎ、30%を売られすぎの判断基準としています。
さらにRCIは取引日直前の一定期間の価格に順位を付けて分析し、直近の株価の価格や日付の順位が市場にどのくらいの影響を与えているのかを表すものであるのに対し、RSIは価格の上昇幅と下落幅を使って市場の過熱状況を把握するものです。
加えて RCIは順張り、RSIは逆張りに向いている という点でも違いがあります。
株式投資でRCIを使うにはどうしたら良い?
株式投資でRCIを使うトレーダーは少なくありません。ではRCIを効果的に使ってトレードするためにはどうしたら良いのでしょうか。RCIをトレードに利用するためには、いくつか覚えておくべきポイントがあります。それは、
- RCIのゴールデンクロスとデッドクロスとは?
- RCIは+100で天井圏となり-100で底値圏となる
- RCIのお奨めパラメーター設定とは?
- RCIを使って株のスクリーニングを行なう方法
という4つのポイントです。ではこれらのポイントについて詳しく解説します。
RCIのゴールデンクロスとデッドクロスとは?
RCIでまず注目すべきなのは、『ゴールデンクロス』と『デッドクロス』というサインです。
RCIは期間を決めて価格と日付の順位を付けていきますが、この期間はトレーダーが決めることができます。そのため株式投資でRCIを使用する際には、短期線として9週線、中期線として26週線、長期線として52週線がよく用いられます。
とくに株価の値動きは3ヶ月から4ヶ月を目安に転換期がやって来るといわれているため、RCIのラインも 3ヶ月から4ヶ月前後の期間を設定 した方が正確性が上がります。
ゴールデンクロスとデッドクロスについては、どのインジケーターでも基本的な考え方は同じです。
短期線が長期線を下から上へ突き抜けたら強い『買い』のサイン、逆に短期線が長期線を上から下に割り込んだら強い『売り』のサインとなります。
とくに短期線が多少横ばいになってからのゴールデンクロスやデッドクロスを見つけることができれば、かなりの確率で利益を上げられるでしょう。
RCIは+100で天井圏となり-100で底値圏となる
RCIを利用するうえで必ず覚えておかなければならない別のポイントが、『天井圏』と『底値圏』です。よく似たRSIとは異なり、RCIでは天井が+100%、底値が-100%です。
売りや買いのタイミングとなる天井圏は一般的に+80%から+100%、底値圏は-80%から-100%となっています。天井圏や底値圏にRCIが入った場合に売りや買いでエントリーすると利益を上げられる確率は高くなるでしょう。
より慎重なトレーダーの中には、天井圏に入ったRCIが反落して価格が下落を始め、再度+80%のラインに触れた時に売りポジションを取る人もいます。
RCIのお奨めパラメーター設定とは?
RCIは一定期間内の価格と日付に順位を付けるものなので、どのくらいの期間で分析するかを決めるパラメーターが必要となります。
これはトレーダー各自が任意に設定することができますが、一般的に多くのトレーダーが利用しているパラメーター値があります。
この9、26、52という数字は、株式投資やFXで頻繁に出てくる数字です。
たとえば別のインジケーターである一目均衡表では、この3つは基本数字と呼ばれ、株価のサイクルを判断するためによく用いられます。株式投資やFXのセオリー通りのパラメーターといえるでしょう。
ただしトレーダーの経験値から、パラメーターを変更することも可能です。場合によっては短期線のパラメーターを7から9、中期線を21から26、長期線を42から52の中で変更してみる必要が生じるかもしれません。
RCIを使って株のスクリーニングを行なう方法
株式投資ではスクリーニングが必要となります。スクリーニングとは『ふるいわけ』という意味で、膨大な数の銘柄の中から投資する銘柄を絞り込むことです。
スクリーニングを行えば、利益が出やすい銘柄を簡単に見つけることができます。インターネット上には株価のチャートをチェックするサイトが多数運営されています。
その中には、さまざまなインジケーターを利用して銘柄をふるい分けることができる設定を持つウェブサイトもあります。そうしたページでは、RCIを使って株のスクリーニングを簡単に行えるのです。
RCIの項目に+80%や-80%を入力して検索すれば、買いや売りのサインが出ている銘柄だけをピックアップしてくれます。こうしてふるい分けられた銘柄の中から、将来性のありそうな株式会社に投資することができるでしょう。
RCIを株式トレードで使う具体的なポイント
では実際にRCIを株式トレードで使う際のポイントについて見ていきましょう。RCIはいろいろな活用方法がありますが、
- RCIを上昇トレンドで使う方法
- RCIを下降でトレンド使う方法
- RCIをトレードで使う際の注意点
について知っておくと、株式トレードで成功する可能性が高くなります。ではこの3つのポイントについて解説します。
RCIを上昇トレンドで使う方法
RCIはRSIのように買われすぎ・売られすぎを見て逆張りするという使い方ができる一方、 順張りもできる という特徴があります。
ではRCIを上昇トレンドで使う方法について見ていきましょう。上昇トレンドが発生している場合、下降トレンドやレンジ相場から徐々にチャートは右肩上がりになり、高値が更新されていくはずです。
ここで注目すべきなのは短期線と中期線、もしくは短基線と長期戦です。上昇トレンドが発生する前には、下降トレンドもしくはレンジ相場だったはずなので、中期線や長期戦は0%付近、もしくは底値圏で横ばいになっていることになります。
当然短基線も横ばいもしくは右肩下がりになっていることでしょう。しかし価格が上がり始めて上昇トレンドが発生すると、もっとも敏感に反応する短期線が反転し上昇を始めます。
中期線もしくは長期線が底値圏にある状態で短期線が上昇に転じたら上昇トレンドが始まったと考えて『買い』ポジションを取ると、利益を上げられる確率が高まるでしょう。
この図にあるように、オレンジの長期線が底値圏で横ばいになっている状態で、青い短期線が上昇に転じています。ここでは 押し目買いのチャンス が発生していると言えるでしょう。
RCIを下降でトレンド使う方法
RCIは下降トレンドでも順張りに用いることができます。上昇トレンドにおける順張りと同様、短期線と中・長期線に注目します。
下降トレンドが発生する前は上昇トレンドやレンジ相場だったはずなので、RCIは0%や+100%付近を推移していました。
中期線もしくは長期線が天井圏である+80から+100%の間を横ばいに推移している中で、短期線が下落し始めたなら、下降トレンドの発生を意味しているので売りのサインとなります。図にもあるように、 戻り売りのチャンスが発生 していると言えるのです。
RCIをトレードで使う際の注意点
RCIを株式トレードで用いる際にはいくつかの注意点に留意しなければなりません。注意点について覚えておくことで、思わぬ損失を避けることができます。
まず注意点として挙げられるのは、パラメーターの設定についてです。
RCIはオシレーター系のインジケーターとして逆張りもできれば、トレンド系のインジケーターのように順張りも行えるとても便利なテクニカル指標です。しかしパラメーターの設定によってトレンドが変わることがあるという点には注意しましょう。
パラメーターの設定によって考慮する期間が変わるので、発生しているトレンドが変わることがあるのです。
この図から分かるように、期間を短くすれば下降トレンドになっているものの、長期的に見ると上昇トレンドが発生していることが分かります。
そのためRCIの期間の設定によってトレンドの方向や分析結果が変わることがあり得ます。
続いてRCIの注意点は、 価格の変動幅 がまったく考慮されていないという点です。
通常テクニカル分析では、どのくらい価格が上昇・下落したかを考慮して将来の市場の動きを予測します。しかしRCIの場合には、価格と日付の順位を付けるだけで価格の変動幅は考慮されずただ1日の終値だけで分析が進んでいきます。
さらにRCIは短い時間足を使うと機能しにくいという特徴があります。1分足や5分足といった短いスパンのローソク足を利用すると、天井圏と底値圏を頻繁に行き来するチャートになり、エントリーのタイミングを掴めません。
RCIが非常に敏感に反応するようになるので規則性が生まれにくくなるだけでなく、分析結果とその後の市場の動きが異なるダマシも増えて思わぬ損失を被ることもあり得ます。
まとめ
RCIはオシレーター系とトレンド系のインジケーターの特徴を併せ持った便利なインジケーターです。
順張りにも逆張りにも利用できるので、使いこなすことができればさまざまなシーンで利益を上げやすくなるでしょう。
ゴールデンクロスやデッドクロスでの利用方法、上昇トレンドや下降トレンドが発生している時の順張りの方法などについてもしっかり把握しておくことが重要です。
パラメーターの設定などにも注意を払えば、株式投資で大きな利益を上げられるかもしれません。