ボリンジャーバンドは使いやすく機能しやすいので、FXや株式投資など、多くのトレーダーから利用されているインジケーターです。
しかし、 σ(シグマ) や偏差について正しく理解した上で扱っているトレーダーはほんの一握りです。
ボリンジャーバンドはどんなインジケーター?
そうですね、一言で言うと、統計学的なアプローチによって「環境認識、エントリーの判断、利確/損切りの判断」の3要素の情報をまとめて読み取れる大変便利なインジケーターです。
ちなみに環境認識とは、トレンドの発生有無、方向性、買いと売りの強弱について分析することを言います。
また、トレードスタイルには順張りと逆張りの2種類がありますが、そのどちらにも利用できることから非常に汎用性の高いインジケーターであると言えますね。
ではまず、ボリンジャーバンドの見た目から確認していきましょう。
上図において、ローソク足の動きに沿うように 7本のライン が帯状になって推移しておりますが、これがボリンジャーバンドです。
そして、一番真ん中にあるラインをミドルラインと呼び、一番外側のバンドを±3σ(シグマ)、その一つ内側を±2σ、更にその内側のバンドを±1σと呼びます。
ミドルラインとは、一定期間における価格の平均値をラインにしたものなので移動平均線と同じものになります。
通常、ミドルラインは20期間で利用されるので「ミドルライン=20期間移動平均線」と覚えましょう。
σ(シグマ)とは、統計学で使われる用語で標準偏差を示す記号です。
後程詳しく説明しますが、ボリンジャーバンドのσとは、一定期間における価格の平均値からどの程度の上下幅で価格がばらつきやすいのかを示すものになります。
±1σ → 68.3%の確率で価格のばらつきがこのバンド内に収まる
±2σ → 95.4%の確率で価格のばらつきがこのバンド内に収まる
±3σ → 99.7%の確率で価格のばらつきがこのバンド内に収まる
ボリンジャーバンドの偏差σとは?
では次に、ボリンジャーバンドの標準偏差(σ)について詳しく解説していきます。
先述したように、標準偏差とは統計学で使われる用語であり、以下の計算式によって求められます。
いえ、こちらはトレードのプラットフォーム上で自動的に計算してくれますので、覚えていなくても問題ありません。
ただし、ボリンジャーバンドのσを正しく使っていくためには、この計算式から算出される数値にはどのような意味があるのかについてしっかりと理解しておいた方が良いですね。
まず、統計学で言う標準偏差とは簡単に言うと「ある観測対象における数値のばらつき具合」を数値にしたものになります。
では日常を例にして、 数値のばらつき とは何なのかを考えてみましょう。
ある学校のクラスで100点満点のテストを行い平均点が60点だった場合、その内の一人が取った85点という成績は優秀だと思いますか?
そうですね。
クラスのみんなが大体60点前後を取っていて、平均点からの上下ばらつき幅が小さい中で一人だけ85点を取っていたとしたら間違いなく成績優秀者です。
しかし、ほとんどの生徒も80点以上を取っていて、ほんの一部の生徒が取った低い点数のせいで平均点が下がっていたとしたらどうでしょうか?
この場合、平均点からの上下ばらつき幅が大きいテストとなるので平均点より25点高い点数を取ったとしても特別すごいとは感じませんよね。
これを相場に置き換えて考えてみましょう。
トレード相場のボラティリティ(価格変動の強さ)はその時々で変わってくるので、平均値からのばらつき具合を計るための標準偏差(σ)という物差しがあると非常に便利なのです。
また、標準偏差を求めることで下図にある正規分布と呼ばれる統計学の収束率に当てはめることが可能になります。
要するに、次の終値が±1σの幅でばらつく確率は正規分布の理論上68.27%になり、±2σの幅でばらつく確率が95.45%、±3σの幅でばらつく確率は99.7%となるのです。
ボリンジャーバンドのチャートの見方
では次に、ボリンジャーバンドをチャート上で使いこなしていくために基本形状の3パターンについて解説します。
この3つの動きを追っていくことで、相場における押し目や戻り、トレンドの転換点を早期に捉えることができるようになります。
早速ですが下図をご覧ください。
この様に、ボリンジャーバンドには 「スクイーズ」「エクスパンション」「バンドウォーク」 という3つのパターンが存在します。
3つのパターン | 説明 |
---|---|
スクイーズ | ボリンジャーバンドのバンド幅が狭まっている状態のことで、ボラティリティが小さい相場において発生する |
エクスパンション | バンド幅が広がっている状態のことで、ボラティリティが大きい相場において発生する |
バンドウォーク | ローソク足が±2σの上下どちらかに張り付くように推移し続けている状態のことで、エクスパンション時にトレンドが発生したことを示す |
そもそも、トレードの相場というのは「レンジ→ブレイク→方向性(トレンド)」の動きをひたすら繰り返して形成されていくものです。
従って、ボリンジャーバンドの標準偏差も「スクイーズ→エクスパンション→バンドウォーク」というように相場のボラティリティ(価格変動の強弱=ばらつき具合)に合わせるようにして形状が変化していくのです。
ボリンジャーバンドのトレードでの使い方
ここまでで、ボリンジャーバンドの基礎についてはしっかりと確認いただけたかと思います。
ここからは、ボリンジャーバンドを利用した具体的な手法を2つご紹介していきます。
1つ目は、トレンドが発生した後の押し目や戻りを狙ったトレンドフォローの手法で、2つ目はトレンドが十分に継続した後の転換を狙った方法になります。
上図は、上昇トレンド中における 押し目買いポイント を探っているところです。
まず、①のようにボリンジャーバンドの+2σに張り付くようにローソク足が動きバンドウォークが形成されたことを確認します。
次に、②のようにボリンジャーバンドの反対側まで価格が落ちてくるのをしっかりと見届けます。
そして、-2σ付近で価格が収束してから再び上昇を見せ、③のようにミドルラインを陽線で上抜けたところが買いのサインになります。
下降トレンドの戻りを狙う場合はこれと全く反対の考え方で再現可能です。
次に、下図をご覧ください。
こちらは、 下降トレンドの大底からの上昇転換を狙っているチャート になります。
まずは、①のように-2σの下抜けに何度も挑戦しているものの下げ止まっていることを確認します。
次に、②→③のように一度大きな上昇を見せてから再度下に戻されるところを見届けます。
そしてその後、④のようにミドルラインを陽線で上抜けた瞬間が買いのサインになります。
こちらも同様に、上昇トレンドからの下降転換を狙う場合はこれと全く反対の考え方で再現可能です。
ボリンジャーバンドを使ったトレードでの注意点
では最後に、ボリンジャーバンドを利用する際の注意点について確認していきます。
ここをきちんと押さえておかないと何度も損切トレードを繰り返してしまいますので、最後までしっかりとチェックしてくださいね。
ボリンジャーバンドの利用において最も注意しなければならないことは、シグマのことを「収束率」ではなく誤って「反転率」と認識してしまうことです。
標準偏差のところで説明した通り、±1~3σは価格のばらつきが収束することを意味しているだけなので「反転」を狙った逆張りの合図にはなりません。
こちらの正規分布の表をもう一度ご覧ください。
これを見ても分かる通り、+2σから-2σの間にある95.4%という確率はあくまでも この範囲内で価格のばらつきが収束すること を示しているにすぎません。
つまり、±2σのラインぎりぎりで終値が何度も収束し続ける可能性も十分にありますし、このグラフは95.4%の確率で反転して-2σから+2σへ価格が動いてくれるという意味ではありません。
まとめ
この記事では、標準偏差の意味について理解を深めながらボリンジャーバンドの効果的な利用方法について解説してきました。
そもそも、ボリンジャーバンドは相場のトレンドを読み、「順張り」で利用することを目的に開発されたインジケーターです。
それをしっかりと念頭に置きつつ、タッチで逆張りのように安易な使い方をしないように気を付けながら取引でしっかりと利益を残せるようにしていきましょう。