RSIとRCIは、どちらも「 市場における売りと買いの過熱感 」を計るオシレーター系インジケーターです。
一見同じように見えるテクニカル指標ですが、RSIは「値幅」、RCIは「順位」をそれぞれ基準にして算出されています。
「それによって何が変わる?」「結局どっちが使える?」などといった疑問に答えるために、両者の違いを踏まえつつ使い方を解説していきます。
RSIとはどんなインジケーター?
RSI とは、一定期間における価格の上がり幅と下がり幅の合計値を利用して、「買いが優勢なのか売りが優勢なのか」を教えてくれるインジケーターです。
買い優位の状態と売り優位の状態が交互に繰り返されるのが、FX相場の基本です。一定期間買われすぎると優位性が売りに転じ、反対に一定期間売られすぎると優位性が買いに転じます。
RSIはこの相場の原理を利用するために作られた指標で、
- RSIが買われ過ぎ状態を示せば売りエントリーのシグナル
- 売られ過ぎの状態を示せば買いエントリーのシグナル
となります。
RSIの計算式は以下になりますが、MT4などそれぞれのプラットフォーム上で自動的に計算してくれるので暗記しておく必要はありません。
そして、この計算式を元にしてRSIを実際のFXチャートに表示させると下図のようになります。
0%~100%の割合を上下に推移するように動いている棒グラフ状の指標がRSIです。
RCIとはどんなインジケーター?
RCI とは、一定期間のローソク足を終値基準で順位付けして、その順位を元に「買いが優勢なのか売りが優勢なのか」を教えてくれるインジケーターです。
この終値を基準にした順位を、以下の計算式に当てはめることでRCIの数値が算出されます。
RSIの計算式と同様に、こちらもプラットフォーム上で自動的に計算してくれるので暗記しておく必要はありません。
ただ、RCIの原理を理解するためには計算式の「 d 」の部分が最も重要なので、もう少しだけ詳しく説明しますね。
上のローソク足の図を例に考えてみましょう。
- 1本目のローソク足の終値順位は9位なので、d=「ローソク足の順番 - 価格の順位」=「1 - 9 = -8」、これを2乗なので 「 -8 × -8 = 64」となり、1本目のローソク足では「d² = 64」となります。
- 2本目のローソク足では、d=「ローソク足の順番 - 価格の順位」=「2 - 7 = -5」、これを2乗なので 「 -5 × -5 = 25」となり、2本目のローソク足では「d² = 25」となります。
このようにして n 期間分の d² の数値を取っていきその合計値を上の計算式に代入して、RCIの期間設定値を「n³ - n」に代入することでRCIの数値が算出されます。
では実際にRCIをチャートに表示させた場合どうなるかを見てみましょう。
RSIと実際の見た目も似ていますが、RCIは-100%~100%までの数値間を上下に激しく行き来しています。
RSIとRCIの特徴の違いについて
RSIとRCIの用途には大きな違いはありません。どちらも、相場で逆張り狙うために「 売買タイミングを計る 」目的で使用します。
一つだけ大きく違う点を上げるならば、「直近の値動きに対する反応速度」です。
RCIはその計算式から分かる通り、直近のローソク足を先頭に順位付けをしているので、直近の値動きの上下に対してよりすばやく反応するようにできています。
一方でRSIは、単純に設定期間の値上がり幅と値下がり幅の合計値から計算されているので、時間軸の概念は考慮されていません。また、RCIと比べても上下移動が緩やかです。
RSIとRCIでチャート分析をするメリット
さて、ここまでの説明で、RSIとRCIの基本的な構造と使い道は理解できましたか。
次に両者を使う上での具体的なメリットとデメリットを解説します。ご自身のトレードスタイルにはどちらのテクニカル指標がマッチするのか、ここでしっかりと整理しましょう。
RSIを利用するメリット
RCIと比べたときのRSIのメリットは以下の3つです。
- 余計なシグナルが少ない
- 大きな利幅を狙える
- 他のインジケーターと組み合わせしやすい
先ほど説明した内容の復習ですが、RSIやRCIのようなオシレーター系インジケーターは市場における何を見るための指標だったのか、覚えていますか。
そうですね。「 市場における売りと買いの過熱感 」を見るための指標です。
これが分かると、買いが過熱して売りに転じる瞬間や売りが過熱して買いに転じる瞬間に、逆張りエントリーをすることができます。
ですが相場というのは、過熱感だけを見て逆張りしていたら勝てるような、そんな簡単なものではありません。通常であれば、トレンドの方向性を読み、だましを回避して、損小利大になるようなポジションコントロールが必須のスキルになります。
RSIはこのような必須のトレードスキルを補完してくれるので、FX初心者でも扱いやすく優位性の高いインジケーターなのです。
RCIを利用するメリット
RSIと比べたときのRCIの一番のメリットは以下の2つです。
- 直近の値動きに対して素早く売買シグナルを出してくれる
- シグナルが多いのでトレード機会が多い
現在のFX業界は狭スプレッドや手数料無料が主流なので、ハイレバレッジのスキャルピング手法でトレード成績を上げている方が増えてきています。
そうした魅力に沿ってトレードしていくためには、直近の値動きに対してより素早く売買シグナルを発してくれてシグナル発生数も多い、RCIの方にメリットがあります。
RSIとRCIのデメリット
ここまでで、RSIとRCIのそれぞれのメリットはイメージできましたか。両者に限らず、全てのテクニカル指標には必ずデメリットが存在します。
自分が使用しているインジケーターの弱点を知ることは、 余計なロスカットを減らす ことに繋がります。そして、余計なロスカットの回数を減らすことでトレード成績も良くなっていきますので、ここでしっかりと両者のデメリットを確認しておきましょう。
RSIのデメリット
RCIと比べたときのRSIのデメリットは、明確なシグナルの数が少ないことです。
上図の相場では、優位性の高いRSI70%反発で売りエントリーをしています。
RSIを元にした損切りと利確の基本ルールは、70%で売りを入れた場合は30%到達で利確し、30%に到達できずに切り返して再度70%に到達してしまった時点で損切りです。30%で買いを入れた場合は全て逆の考えになります。
一度目はだましに合い損切になっていますが、次の取引では大きく利益を伸ばせてているのでトータルの損益費としては優秀な結果となっています。
しかしこの後の値動きをよく見て欲しいのですが、チャート上では重要なネックラインを価格が下抜けしており、水平線でサポレジ転換を起こしています。
よって、環境認識的には 逆張りの売りエントリー を積極的に仕掛けていきたい局面になります。
RCIのデメリット
RSIと比べたときのRCIのデメリットは、狙える利益幅が狭いことです。
上図はRCIの指標をもとにして考えられるエントリーポイントです。
売り買いの過熱感を示す80%と-80%のラインを基準にして、RCIが80%ラインを下抜けすると売りエントリーのシグナル、-80%を上抜けすると買いエントリーのシグナルとなります。
また、今回の例は環境認識も取り入れた手法を取っていますので、長期の目線に沿ったエントリー方向に絞っています。
図を見たら分かる通り、RSIと比べて直近の値動きに反応しやすい分、エントリーと利確のシグナルが多発してしまうので一回のトレード利益幅はかなり狭くなります。
この図を見る限りだとRCIを利用することで有利なトレード機会が増えており、一見するとRCIが非常に魅力的に感じますよね。
しかし、環境認識の基礎スキルが伴っていないFX初心者がむやみにRCIを使うことは大変危険です。
組み合わせを決める際の注意点
さて、ここまでで「RSI・RCIとは何なのか?」「RSIとRCIの違い」「それぞれのメリット・デメリット」について順を追って解説してきました。
最後に、「FX初心者にとってRSIとRCIのどちらを利用する方が良いのか」という疑問にお答えしましょう。
ここまでの説明を踏まえて総合的に考えると、 RSI の方が比較的初心者にとって安全に使えるおすすめのインジケーターだと言えます。
RSIを利用するメリットは以下の3つでしたよね。
- 余計なシグナルが少ない
- 狙える利幅が大きい
- 他のインジケーターと組み合わせやすい
特に、総合的な知識を持って相場分析を行えないFX初心者にとって、他のインジケーターと組み合わせやすい所が非常に大きなメリットになります。
また、MACDもオシレーター系インジケーターですがトレンドを読むことができるので、RSIとの有効的な組み合わせになります。
これら相性の良いインジケーターとRSIを組み合わせた具体的手法については、当サイトの過去記事で詳しく解説していますので是非そちらもご覧ください。
ただし、FX初心者が勝てない理由の一つが「インジケーターによる情報過多」です。あまり複数インジケーターと組み合わせし過ぎないようにしてくださいね。
まとめ
RSIとRCIは名前だけでなく見た目や使う目的も似通っているので、どちらを使えばよいのか今までは判断が難しかったと思います。
ですが、本記事を読み終えた今なら、「狙える利幅、シグナルの数、組み合わせのしやすさ」といった明確な判断基準で選べるようになったはずです。
全てのFX初心者にとって必ずしもRSIがおすすめという訳ではありませんので、ご自身の手法や資金管理方法にマッチングしたインジケーターを採用して頂きたいと思います。